Steve Jobs - Walter Isaacson

 

 

 

一言で言えばこの方は「触媒」だったんだろうと思います。Apple、Pixar、そして復帰後のApple。いつでもジョブズ氏の周りにはクリエイティブな才能を持ったHackerやArtistがいて、彼らの才能をどう活かすかがジョブズ氏の腕の見せ所、といった印象を全体を通して受けました。個人としての魅力がなければ彼ら天才の注意・興味・関心を引き出せないのはもちろんですが。

読み物としては、初期のiPodが出るくらいまではまさにPage-Turner。語るに落ちるなのでぜひ日本語版の上巻だけでも読んでみてください。モノづくり企業の現場にいらっしゃる方には特に読んでいただきたいですね。

一方、iPhone以降の流れは少し退屈かも。また、夫、父。いち社会人としてみた場合のジョブズ氏はまさに”Asshole”という形容がぴったりです。潔癖と偏執、独裁と威圧。世の中から天才と呼ばれる方々は「著しく偏ったその端にいるからこそ天才たりえるんだ」という思いを鮮明に抱きました。

【蛇足】発売日にAmazon.comから原著のKindle Editionを買って読みました。久しぶりの長編洋書にもかかわらず一週間程度で読みきってしまったのは、本の面白さもさることながら、いつでもどこでも手軽に読めるKindleのおかげだと実感。読書という行為も21世紀入りしたんだなぁ、と実感しました。(音楽はデジタルにしたくない、と音源を買ってMDに落として聴いていたという村上春樹さんもいまやすっかりiPod派と聞きました。人は変わるものです、きっと。)