【翻訳】ソフトウェア開発者が何人いれば電球を替えられる?(2014年版)

以下の文章は、Tom Morris さんによる How many software developers would it take to change a lightbulb? の日本語訳です。

The following is the Japanese translation of How many software developers would it take to change a lightbulb? by Tom Morris.


ソフトウェア開発者が何人いれば電球を替えられる?

まず1人。電球を買いに店に行く人。

次にもう1人。電球を買おうとしたけれど、Bitcoin で支払えなくて買えなかった人。買えなかったことを Reddit でぼやき、自分の立場をナチス・ドイツ時代のユダヤ人に例える

続いてもう1人。JIRA に issue を登録しようとする人。カテゴリーがバグなのか、サポートへの質問なのか、要望なのか、それとも「取りまとめるために必要」として誰かがでっち上げた15はあろうかというカテゴリーの1つなのか、決めるのに20分もかかってしまう。

運用担当者1人。電球が合うかどうかのテストをインターネットの悪意に晒されることなく行えるよう、仮想電球装着環境を構築するのに半日かかる。これに取り組んでいたので、その担当者は同環境のパスワードを連絡するのを忘れてしまう。

運用担当者もう1人。選んだ電球が実際に点灯しているかどうか確認するための CI サーバーを構築する。更に、迷惑な同僚が数人。所属する企業の文化・習慣を維持するため、CI を赤(失敗)にしてしまった者に命を奪いかねない電気ショックを与えることを決める。そしてもちろん、あなたは企業文化不適合者になることを望んでいない。

次に、管理職が数人。あたりをうろつき電球テストチームの超人的な努力を横目に見つつ、彼らの作業が10倍の早さで進捗することを望んでいる。達成には更なる残業と、メンバー一人一人が猫の手を借りたくなるほどにがむしゃらに働かねばならないけれど。管理者自身は、現実にはほとんど無意味なガントチャートやバーンダウンチャートを作成して時間を潰している。

経営者向けレポートを作成するために137人。電球、照明器具および照明スイッチを比較するためのレポートを作成している。いずれのレポートも読まれることはなく、経営層はその代わりに「どこが最も接待してくれたか」を基準に電球メーカーを選定する。

1人。電球ライブラリが欲しくて Github をあちこち探してる人。

1人。古くて動かないバージョンの電球ライブラリを Debian と Ubuntu 用にパッケージ化して、修正済みバージョンをまだ「安定してない」とぼやいてる人。

20人。上述のものより少しはマシなバージョンの電球ライブラリを Ubuntu PPA にアップするけれど、メンテをおざなりにしてしまう人。

イケてるハッカー1人。Github でライブラリを探してる人に「そこにある電球ライブラリは全部しょぼい。今日の午後、レッドブルを飲み終わったら俺がイケてるのを作ってやる」と伝える。

1人。Google Glass をかけてる自信過剰なうぬぼれ屋。

1人。どこか遠くに住んでる。電球の仕様を読んだけど理解できず、LightbulbOverflow へアクセスし、すべて大文字で “CAN YOU SEND ME THE BLUBS BY EMAIL TO confusedlightblubman@hotmail.com(訳注:全て大文字、スペルミス、などは StackOverflow で非英語話者がするありがちな書き込み)” と書き込む。けれど、サンフランシスコやロンドンにある企業の経営層は相変わらず、そんな風に遠くにある企業に外注することを「安上がり」と肯定的である。

スーツ姿のコンサルタントが数人。その電球はビジネス用途には向かない、よりモジュラーでなければならない、と主張している。また、彼らが提供するエンタープライズ·サービス·ブリッジおよびメッセージングアーキテクチャと連携し、17もの異なる SOAP や WS-* 標準を使用して通信できる必要がある、と説く。ただし、それらの標準は全て BEA や Microsoft、Oracle や IBM で要職についている人たちがでっち上げたものでしかなく、実装者からすれば「誰がこんなものをっ!!」と相手の顔を原型を留めなくなるまで突き刺さずにはいられないような代物ばかりだ。しかもそんな実装者たちは、でっち上げた張本人であることが多い。

XML スキーマ用語絡みで数人。どの用語を採用すべきか検討している。一方、すげぇハッカーがbillion lightbulb DTD 攻撃を XML アーキテクチャチームにしかけることで「地球上の全電球をぶっ壊してやる!」と思いつく。

若手の開発者数人。XML Schema と SOAP の関係者に、上から目線でモノ申している。「あり得ないくらい長期間放置されてる」と XML Schema などを批判し、JSON ベースの RESTful HTTP API を作るよう迫る。しかし、コンテントネゴシエーションとは何か、安全なメソッドとそうでないメソッドの違いは何か、と問われると、彼らは一様にぽかんとした顔でこちらを見かえしてくる。そして、ドキュメントが一切なく、毎週変更が生じ、Web の仕組みにおいて重要とされることに何一つ対応できていないような API を提示してくる。

オーブンデータの信仰者が数人。RDF を試してみるよう提案している。周囲の50名ほどの人が、「何いってんの!?」と彼をバカにしている。

300人位の暇人。Hacker News にたむろしてる。自分たちのベッド脇の照明がサッカースタジアムの巨大な照明のように明るくならないことを例に挙げて、「電球はスケールしない」とぼやいている。

暇人の集団がもう一つ。従来のやり方で電球を扱うのがいやで、lightbulb.js という新しいライブラリを作る。なぜなら『JavaScriptで書けるものは、いずれJavaScriptで書かれる』から。その電球は17の Javascript ライブラリに依存しており、古い家屋で使おうとすると誰にも気付かれずに静かに壊れてしまう。

『うつけもの』数名。Lambda the Ultimate にたむろしてる。Haskell を理解できない人はおろかで、電球を試してるヒマがあるなら焼身自殺を果たすべき、ということを証明している、数式まみれで解読不能な PDF を提示してきている。

『うつけもの』がもう数名。Lambda the Ultimate にたむろしてる。電球のスイッチを入れるには、事前に博士過程を修了していることが必須であることが普通なことなのかどうか、議論している。

変わり者のブロガーが20人。Haskell の monad である LightbulbStateMutator がそれほど複雑ではないことを説明しようとして、いくつもの役立たずな記事を書いている。彼らはそれをピザ、路上で車にはねられて死んだ動物、ハンセン病、Cher のニューアルバム、その他もっと複雑で抽象的なものなどに例えて説明しようとしている。

漆黒のスーツを来た関係者風の人1人。電球の隣に、とある箱を設置するようしつこく頼んでくる。また、このことを「国家機密」として誰にも話さぬよう、そしてもし尋ねられたら、「ただの属性情報です」と答えるよう念を押している。

おとなしそうな大学教授1人。電球を交換するなら、まずは資格をとりなさいと提案してくる。更に、電球交換手の行動規約に同意し、専門職業人賠償責任保険に加入するべきだとしている。なぜなら、仮に彼らの未熟さが人の死に繋がったとしても、上述の手順を踏んでいれば電球交換手は「悪徳業者、ペテン師、無能者!」と避難されずに済むからだ。

数千人。上述の「おとなしそうな大学教授」に、「逝ってよし」と告げる。

若い女性が1人。セクハラ発言、ヤジ、「犯すぞ!」といった脅しを受けることなく、電球を試す作業に加わることができるかどうか丁寧に訪ねている。

親切な男性が数人。上述の女性に、「キッチンに戻ってサンドイッチでも作っててくれ、ミサンドリー(男性嫌悪)主義者として立ち振る舞うのはやめてくれ。さもなくば、電球ビジネスに女性が首を突っ込む理由がさっぱり分からない、ということを説明しながら君をレイプするよ」と話している。

ベンチャーキャピタリスト数人。オシャレに見せるため、ジャケットは着てるけどネクタイはしていない。「この電球はイケてるね。けど、どうやってマネタイズするつもりなの?」とか、「出口戦略は?」などといった質問をしてまわっている。

電球専門のジャーナリストが数人。新しい電球のテストが誰のスクープだったかを言い合い、更に互いを避難する見苦しい口論を Twitter 上で交わしている。別の電球「業界」記者はそのやりとりを、電球業界うわさ話をまとめてる自分のブログに投稿する。

そしてついに最後の1人。電球を交換する。


初出公開: 2014年2月20日、 最終更新日: 2014年2月20日