「チュートリアル英文翻訳調の文章の書き方」から学ぶ翻訳アンチパターン
今年のはじめに話題になったけどちゃんと目を通してなかったこのサイト、改めて目を通してみたら「翻訳アンチパターン」の宝庫でした。「あるあるw」と笑い飛ばすにはもったいないので、アンチパターン目線でまとめてみます。自戒を込めて。
英文翻訳アンチパターン 文体編
文章を「英文翻訳調」にしてしまう要素が細かく挙げられてるので、これをまねればあっという間に「英文翻訳調」が出来上がってしまいます。要注意。
主語の明示と人称代名詞の多用
- 主語を省略しない英語では、I, we, you, he, she, they などのような(人称)代名詞が用いられがち1
- 想像がつかない場合をのぞき、日本語では主語が省略される
- 日本語には豊富な人称代名詞がある
文末の「です/ます」調への統一
- 読者に納得してもらいたいがために、ていねいな「です/ます」調に統一されがち
英語の助動詞に由来する表現
- 助動詞(will, should, must など)が文末に押し込まれがち
- 例)あなたはこのサンプルを無視することができます(can)
- 一部の動詞と前置詞の組み合わせ表現も文末に押し込まれがち
修飾節の配置
- 関係代名詞などで修飾された長い一文を「訳し下ろし」せずに「訳し上げ」てしまいがち
- (訳し上げの例)人々に崇められなくなった神は商店街の老舗豆腐屋主人手作りの豆腐の角にバーコードに禿げた頭をぶつけて死んだ。
- (訳し下ろしの例)人々に崇められなくなった神は死んだ。商店街の老舗豆腐屋主人手作りの豆腐の角にバーコードに禿げた頭をぶつけたためである。
有名構文の使用
- 英語で多用される構文には「定番訳文」をあててしまいがち
- AばかりではなくB (not only A but also B)
- AであればあるほどB (the more A, themore B)
形容詞の語彙
- 同じ内容が別の書き方で繰り返されがち
- 品詞 + 接尾語 の形で増殖する形容詞句
- 「~的」と訳しておけばとりあえずそれらしくごまかせてしまう
日本語にはない記号–ダッシュ、コロン、セミコロン
- 英文で便利に使われているので、訳文でもそのまま使ってしまいがち
- ダッシュ → 強調や総括、2度用いれば括弧の代わりに使えてしまう
- コロン → 文章のあとに例示やリスト表記をもってくるときに接続詞っぽく使えてしまう
- セミコロン → 短い説明を続けるときの接続詞っぽく使えてしまう2
単語の言い換え
- 英語ではひとつの言葉が別の表現で置き換えられがち
- 形容詞に限った話ではない
- 例)仕事 → 役割・働き・天職・役目
読点の配置
- 読点(カンマ)を置く位置を英文に合わせがち
- 意味上のまとまりの区切り3、列挙の区切りなど、特定箇所でしかカンマを使えない英語
- 読点が文章に与える「視覚的な空間」が、分かち書きのない日本語では重要
専門用語の処理
- 初出の用語に説明を加えた結果、文章がだらだらと長くなってしまいがち
- 例)HTMLにはバージョンごとにDTD(Document Type Definition:文書型定義)というものがあります。
- なんでもカタカナにしてしまいがち
- 読者の混乱を招くような「専門用語の日本語化」を行ってしまいがち
英文翻訳アンチパターン 構成編
以下は、
- 「日本語は歌と物語の言語、英語は契約の言語」ということに起因する英語独特の文章構成がある
- 論理的、説明的な文書ではそれが標準になっていることも多い
という前提で一歩引いて読むほうがいいかもしれません。
段落割り
- 意味上の区切りで段落を分けてしまいがち
章・節割り
- 文書の塊の先頭部分を読めば概要がつかめるように、章・節を構成してしまいがち
- 第1章を読めば文書全体の概要が、第1節を読めばその章の概要がつかめるような構成
- 文書を先頭から読み進む読者のために、前半の章・節により簡単な内容を持ってきがち
謝辞、まえがき、導入の書き方
- 「〜をしてくれた…氏に感謝します。」といった具合に謝辞をずらずらと書いてしまいがち
- 文書の内容によっては(特に参加型コミュニティの文書)、前書きを気さくに書いてしまいがち
これでアンチパターンまとめはおしまい。「~してはいけない事例集」ではないので、用法用量を守ってただしく参考にしましょう。専門用語を処理するときのベストプラクティスが知りたいところです。